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上場準備における監査法人選び

IPOを意思決定したら監査法人と主幹事証券会社を選定する必要があります。

上場準備にあたり、まずは監査法人を選定し、監査法人のショートレビューを受ける必要があります。ショートレビュー(「予備調査」ともいいます。)とは、上場を目指す企業が上場に向けての課題を抽出するために受ける調査のことで、一般的には上場後に監査契約を締結する予定の監査法人に依頼します。上場準備は、ショートレビューの結果から課題改善を行っていくことからはじまります。具体的には、社内管理体制の整備・運用、社内規程集の整備・運用、適時開示体制の構築、上場申請書類の作成やJ-SOX対応など、さまざまな課題の改善や準備を行っていくことになります。

これらの上場準備を行っていくにあたっては、監査法人、主幹事証券会社と連携をとっていく必要があるため、監査法人、主幹事証券の選定は慎重に行う必要があります。監査法人を選ぶにあたっては、監査報酬が安いというだけで判断するのではなく、自社の規模、事業内容などを考慮したうえで、以下のポイントを参考に選定していただければと思います。

 

1.監査法人の規模

監査法人は大手監査法人、準大手監査法人、中小監査法人に分類されます。

それぞれの特徴は以下のとおりです。

①大手監査法人

公認会計士・審査会では「上場企業100社以上を監査し、かつ常勤の監査業務従事者が1,000人以上の監査法人」を大手監査法人と定義しており、日本における4大監査法人とは、国際的な4大会計事務所(Big4 EY、KPMG、Deloitte、Pwc)と提携している以下の4法人をいいます。

・EY新日本有限責任監査法人

・有限責任あずさ監査法人

・有限責任監査法人トーマツ

・PwCあらた有限責任監査法人

大手監査法人のメリットは、公認会計士が多数所属していることから大企業の監査にも十分対応でき、海外においても大手グローバルファームと提携していることから海外展開している企業への対応も可能です。また、あらゆる業界の監査実績もあり、複雑な事例や珍しい事象、最新の事象等に対する対応力は優れています。大手監査法人は、IPOの実績も豊富であり、専門部署による高度な業務にも対応可能ですが、コストは高めになります。IFRSによる上場準備や海外展開を視野に入れている場合は、IFRS専門部署を設置している大手監査法人を選定されるのが良いと思われます。

 

②準大手監査法人

公認会計士・審査会では「大手監査法人以外で、比較的多数の上場会社を被監査会社としている監査法人」を準大手監査法人と定義されおり、以下の5法人をいいます。

・仰星監査法人

・PwC京都監査法人

・三優監査法人

・太陽有限責任監査法人

・東陽監査法人

準大手監査法人は、大手よりは小さく中堅・中小監査法人よりは大きい監査法人というイメージがあるかもしれませんが、中堅・中小監査法人よりは圧倒的に大きく、大手監査法人の長所である国際水準の監査品質やネットワーク・ファームを通じた国際業務の提供といった機能を準大手監査法人も当然のように持っています。監査法人の対応スピードや監査報酬が大手監査法人に比べ若干、安価になる場合もあり、自社の規模を考慮して、中堅上場企業では、準大手監査法人を選ぶ会社も増えています。

 

③中堅・中小監査法人

大手監査法人、準大手監査法人以外を中堅・中小監査法人といいます。

中堅・中小監査法人であっても大手監査法人出身者が在席していることが多く、担当者の実績や経験値の面では、大手監査法人とそん色のない監査チームを組成できる場合や、高い監査品質を保っている監査法人もあります。しかし、中堅・中小監査法人は、IPO経験のある担当者が少ないことや海外の会計事務所と提携していないことが多いため、上場準備において中堅・中小監査法人を選ぶ場合は慎重に検討定する必要があります。

 

2.監査法人との相性

監査法人との相性は意外に重要です。IPOは、タイトなスケジュールの中で、経験したことのない新たな業務を膨大にこなさなければいけません。監査法人の担当者と合わない、親身になってくれないなどの理由で上場準備が進まないことがあるため、監査法人との相性は重要な選定ポイントになります。

ただし、この監査法人に依頼したいが、担当者との相性が合わないなどの理由の場合は、安易に監査法人を変更するのではなく、正直に担当者の交代をお願いしてみるのも一つの手段です。

 

3.まとめ

・監査法人は、監査報酬だけで決めず、IPO支援実績や申請会社の事業内容の理解度などを考慮し選定することをおすすめします。

・主幹事証券が大手、準大手証券以外の場合は、IPO支援実績が豊富な大手監査法人または準大手監査法人から選ばれることをおすすめします。

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